開発費用の安いDDS市場のビジネスチャンス
ツイート医薬品メーカーがこぞって開発を急ぐゲノム創薬には莫大な費用が必要ですが、一方製剤技術を利用することによって有効性を高めるDDSは対費用効果が高く、新たなビジネスチャンスを生み出します。
胃の中が酸性で、腸の中がアルカリ性であることを利用し、経口薬を酸には強いがアルカリには溶けるという物質でコーティングすると、腸で効率よく成分を吸収させることが出来ます。このように薬の主成分はそのままに、形状や添加物を変えることで薬の吸収される場所や時間をコントロールできるようにすることをDDS(drug Delivery System)といい、薬物伝送システムとも呼ばれています。
薬の効果を長い時間持続させたり、効き目が表れる時間を遅らせたりすることができます。
DDSは新薬開発とは違うので、開発費用が少なくて済むにもかかわらず、薬効を強めたり、持続させたりできるのでとても役に立ちます。日本の医薬品メーカーは海外に比べ、開発費に恵まれているとはいえません。ですから、DDSの研究は工夫次第でビジネスチャンスをつかむことができる分野としてとても魅力があります。
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水なしで飲める薬
最近普及しているのが、口にいれるとすぐに溶ける口腔内崩壊錠です。子供や高齢者は水で薬を飲むのが難しいので助かりますし、水が手元にない外出先や乗り物の中でも服用できるので便利です。アルツハイマー治療薬のアリセプト(エーザイ)、消化性潰瘍用剤のタケプロン(武田薬品)、H2ブロッカーのガスタ―(アステラス製薬)などは他の薬に先立って口腔内崩壊錠を揃えていました。
徐放剤という、少しずつ成分が溶け出すことで、血中の薬の濃度を少しずつ上げていくものもあります。長い時間効き目が欲しい鎮痛剤や、精神病の薬などは徐放剤の形で提供されることがあります。糖尿病患者のインスリン注射にも徐放剤が開発され、注射回数を減らすことで日常生活の負担を減らせるようになってきました。
他にも、身体に貼ったステッカーから成分吸収できる気管支拡張剤や、スプレー式の抗インフルエンザ薬なども、飲み薬が飲めない乳幼児、高齢者、障害者に便利です。体の中の特定の場所で薬を吸収させることができれば、他の臓器への負担が減らせます。特に副作用の多いがん治療薬にもDDS技術はとても有効で、製剤の研究開発が推進されています。
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