免疫や炎症に関与するサイトカインとは?
ツイート近年、人間の細胞内にある特定物質を標的にした新薬の開発が進んでいます。新しい細胞内物質が発見されるたびに、それをターゲットとする新薬が生まれています。
生体内では、細胞同士が情報伝達をしています。各細胞が、生理活性物質を分泌することによって情報を伝えるのです。例えば、体に異変があると発熱したり、痛みや腫れが出たり、血糖値、血圧が上がったりしますが、これらの症状は炎症や免疫に関するサイトカインというたんぱく質が作用することで起こります。
サイトカインには様々なものがあり、炎症を引き起こすもの、病原菌が侵入した場合それが増えないよう細胞を保護するもの、細胞の増殖や分化に関するものなどがあります。生体が病原菌やウイルスなどの異物を察知すると、サイトカインが活発になり、細胞間で情報伝達を始めます。その作用が痛みや発熱などを引き起こすのです。
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サイトカインが生体に作用する仕組みのイメージは、鍵と鍵穴の関係です。サイトカインは鍵で、反応を引き起こすスイッチを入れます。細胞が持つ受容体(レセプター)が、鍵穴の役割です。サイトカインも受容体も様々なものがありますが、例えば炎症を引き起こすサイトカインが、炎症反応を伝達する受容体にぴったりはまると、炎症反応にスイッチが入り、その細胞に炎症が起こります。このような反応が起きるには、鍵と鍵穴が一寸違わず一致することが条件となります。
現在では、標的とする症状を引き起こすサイトカインと、ぴったりの鍵型をもつ新薬の開発が進んでいます。薬物治療では、口から服用し、成分を内臓に吸収させて血中に移す方法や、皮膚から直接注射する方法がありますが、そのようにして体内に入った薬剤はサイトカインの代わりに受容体の鍵穴をふさいでしまうことで、サイトカインが入ってこられないようにします。すると痛みや炎症のスイッチが入らなくなるのです。
今後の課題である対象疾患の選択
しかし、我々にとって不快な症状を起こすサイトカインの作用も、本来生体の保護のために起こるものです。つまり、サイトカインの作用を無理に抑えこむことによって、生体がかえってダメージを受けてしまうことがあるのです。身近な例では、風邪による発熱をむやみに下げると、病原菌の増殖を活発にさせてしまうことがあります。
一方で、サイトカインを抑え込んだ方が良いケースもあります。例えば花粉症の場合、細胞が花粉を病原菌と勘違いすることにより、サイトカインを分泌し鼻水やくしゃみの症状を引き起こすので、不快な症状を抑えるために薬で受容体の鍵穴をふさいでしまった方がよいと言えます。
このようにサイトカインの作用を利用する薬剤は有効性が高いものの、新薬の開発にあたっては慎重に対象疾患を検討する必要があるといえます。
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