医療費抑制策による医薬品業界への影響とは?
ツイート国民の医療費高騰に歯止めをかけるため、国は医療費抑制策を押し進めています。そしてこの流れは、医薬品業界にとって大きな試練となっているのです。
2014年4月、診療報酬の引き下げが行われました。これは制度開始以来初の事で、引き下げ率は2.7%、その後2004年、2006年にも引き下げが行われ、2008年に一部見直しが入ったものの、全体では0.82%のマイナス改定となりました。
その後、日本医師教会により、減収によってダメージを受けている医療機関の窮状が訴えられ、医療費抑制策は再考されることとなりました。そして2010年には1.55%、2012年には1.38%の引き上げが行われたのです。
一方、1960年代から始まった薬価の引き下げは留まらず、国民の医療費全体における薬剤比率は1990年代後半から現在までで、およそ30%〜20%に減少しました。国民一人当たりの医療費が増大していることを考慮すると、医療費抑制策は医薬品市場に大きな影響を与えていると言わざるを得ません。
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不安要因が国内市場に隠されている
日本では、高齢化や生活習慣病の増大に伴い、高脂血症薬や血圧降下剤等の循環器用薬の市場が拡大いしています。これは、医薬品業界が売上を確保してこられた理由の一つですが、日本のメーカーが十分な利益を上げることができたかといえば、そういう訳でもありません。
なぜなら、そのような製品の出所は外国製であることが多いのです。また、日本市場のシェアを見てみると、比較的古い製品、ライフサイクルの長い製薬が多く出回っています。この手の医薬品には、長期収掲品の引き下げルールが適用されるため、売上が伸び悩む原因となっています。
しかも、2006年には、長期収掲品の引き下げ率がさらに拡大したため、売上高の高い製品がこぞって引き下げられることとなりました。それゆえ、国内主要製薬メーカーのほとんどが影響を受けているのです。
さらに、現状市場規模の小さいジェネリック医薬品に、診療報酬や薬価における優遇策が適用されれば、ジェネリック医薬品の売上が上がることは容易に考えられ、オリジナル製品の売上にも影響を及ぼす可能性があります。
不安材料は、まだあります。まず、卸業者の売上債権回転月数を見てみましょう。薬剤価格の引き下げ前と比べると、どの企業も回転月数が0.1〜0.2カ月短縮しており、医療機関への取り立てを強化していることがわかります。
また、薬価が下がる一方で、売上原価も下がっており、これはメーカーが製品価格をかなり抑えて提供しているという事実を意味します。以上のことから、卸業者はかなり強気な経営戦略をとっていると推測されますが、自己保身のためにはいた仕方ないのかもしれません。
これらの事態から、医療費抑制策がいかに国内製薬メーカーの経営に負の影響を及ぼしているかが見てとれます。
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