これからの医薬品業界の発展や課題について

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合併や吸収が進む医薬品メーカーですが、このことが医薬品業界の発展に結びつくかどうかについては見守っていく必要があります。世間では株主に重点をおいた高収益の経営が期待されていますが、医薬品メーカーは、常に新薬の成果が企業の成長を支えるので、新しい医薬品を開発することが最優先されるのです。

 

これからの医薬品業界の発展や課題について

 

これからの医薬品市場について、考えてみましょう。個人の特性にあわせて医薬品を開発するテーラーメイド医療の構想についてはすでに触れました。一方、万人向けの薬ですが、これはまさに医薬品メーカーがこれまで取り組んできた製剤そのもののことです。

 

つまり、医師が通常第一選択薬(一般的に有効性が保証され、副作用が少ないとされる薬。ファーストラインとも呼ばれる)として使用する薬です。しかし、こういった薬は100%の患者に効果があるわけではなく、また、病気を完治できるわけでもありませんでした。

 

 

しかし、この万人向けの薬の開発には莫大な費用がかかっています。なぜなら、ある程度の割合の人に効果が見られることを確認するには、大掛かりな治験を行い、販売にするために、販売計画や販売促進などに多くの資金、時間、そして労力を必要とするからです。

 

それにもかかわらず、世界中で医療費抑制策が打ち出され、販売規制がかかるなどして、創薬に投資した研究開発費の回収が思い通りにいかなくなってきました。つまり、テーラーメイド医療以前に、万人向け医薬品開発の分野はすでに限界にきていたのです。

 

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iPs細胞は奇跡を呼ぶ新薬に生まれ変わるか

 

こうした中、バイオ医薬品の売上が増加しています。2010年には、世界の売上上位50品目のうちバイオ医薬品が31.6%を占め、翌年には34%になりました。これまで、日本の医薬品メーカーのバイオ医薬品の開発が遅れているといわれてきましたが、海外のバイオベンチャーの買収を進めることにより、開発が始まっています。

 

武田薬品が潰瘍性大腸炎、リンパ腫、アステラスがリウマチ、第一三共が肝細胞がんのバイオ医薬品の開発を間もなく完成させるだろうといわれています。各社のバイオ医薬品は、人の持つ免疫システムを利用する抗体医薬品がほとんどを占めており、これは化学合成の治療薬よりも副作用が少ないと言われています。

 

 

今後の創薬でもっとも期待されるのは、12年に京都大学の山中伸弥教授が発表したiPs細胞の応用です。iPs細胞は破損した組織や死んだ細胞を再生できるとされ、従来の医療を根底から変えるものと期待されています。

 

日本の医薬品メーカーはこれをどのように生かして、革新的な新薬開発につなげるのかが最重要課題となりました。医薬品産業は、これまでの化合物を一つずつ探していく創薬の時代が終わり、iPs細胞という画期的な発見物を応用して、ターゲットを絞った創薬に切り替えていこうとしています。

 

日本人科学者が解明した命の暗号ともいえるものを、日本の医薬品メーカーの手によって奇跡の新薬へと変えていくことを期待します。




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