抗生物質と耐性菌との攻防について

抗生物質と耐性菌との攻防について

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病気の治療や予防を目指し、薬の開発が続けられていますが、感染症治療に有効な抗生物質は、ターゲットとする病原微生物が薬に対して耐性を持ちやすいことから、その開発と使用方法について今後対策が必要となってきます。

 

抗生物質と耐性菌との攻防について

 

人類の歴史上、病気は避けて通れないものであり、特に病原微生物による感染症、古くはペスト、コレラ、天然痘などは多くの人を死に追いやる、まさに脅威そのものでした。当時は原因もわからず、検査をすることも特効薬もなかったことから、勢いがおさまるのをただじっと待つしかなかったのです。

 

1929年にアレキサンダー・フレミングが抗生物質であるペニシリンを発見すると、この効力は多くの感染症患者の命を救うことになりました。当初、青かびから抽出していたペニシリンでしたが、抗菌薬として化学合成できるようになるとさらに多くの患者を助けることができ、もはや感染症を恐れる必要がなくなったかのように見えました。

 

 

しかし、60年代メシチリン耐性黄色ブドウ球菌の出現により、抗菌薬が万全ではないことを思い知らされるのです。それだけでなく、様々な抗菌薬に対しても同じように耐性をもつ病原微生物の出現が相次ぎ、新薬開発とのいたちごっことなっている状況です。

 

80年代には多剤耐性菌といって複数の抗菌薬に対して耐性を示すものも現れはじめました。それまでは、ひとつの病原菌に対して耐性をもつ薬が決まっていたので、別の薬で治療すれば済んだのですが、多剤耐性菌の場合は、効く薬が見つかるまでに時間がかかり、手遅れになってしまう恐れがあります。

 

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抗生物質を適正に使用することの重要性

 

最近の病院内感染は、多剤耐性菌が原因であることが多いです。特に、黄色ブドウ球菌耐性菌のMRSAと緑膿菌耐性菌のMDRPの二つには、医療機関も頭を抱えています。その特徴は、どちらも体力の落ちている人には重い感染症を引き起こすにもかかわらず、健康な人には症状が現れないので、病院内に持ち込むことを防げないのです。

 

従って、院内で患者が症状を訴えはじめた時には、すでに菌が院内全体に広がってしまっていることが多いのです。最近では、大病院を中心に感染症対策室を設け、感染症専門医と看護師の協力で、常に感染症を見張ろうとする動きもでてきました。

 

 

耐性菌の出現は、後を絶ちません。抗菌薬の大量使用がその原因とみられていますが、日本は海外に比べて抗菌薬の使用量が多いようです。抗菌薬は製薬会社が長い期間と膨大な費用をかけて開発したものですから、すぐに効果がなくなってしまうのでは医療経済面でも効率的とはいえないでしょう。

 

抗菌薬は短期間で十分な量を投与することが大原則で、これを守らず無駄な服用を繰り返している現状を見直すことが急務とされます。




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